宮崎県日南市の病院で、入院患者と職員、合わせて44人がおう吐や発熱の症状を訴え、このうち70代から80代の入院患者6人が死亡しました。宮崎県はノロウイルスによる集団感染とみて調べています。
宮崎県などによりますと、日南市南郷町の医療法人春光会東病院で今月12日から22日にかけて入院患者30人と職員14人の合わせて44人がおう吐や発熱などの感染性胃腸炎の症状を訴えました。このうち70代から80代の男性の入院患者6人が、22日までの9日間に相次いで死亡し、5人が重症だということです。死亡した6人はいずれも吐いた物が気管に入るなどして、肺炎を起こしたということです。病院が簡易検査を行ったところ症状を訴えた44人のうち、5人からノロウイルスの感染を示す陽性反応が出たということで、宮崎県は、ノロウイルスによる集団感染とみて調べています。
春光会東病院では、症状を訴えている人を隔離するとともに今月17日から1週間、外来の診療を休診しています。宮崎県は県内の医療機関や福祉施設などに対して患者が吐いたものを素手で処理しないといった感染予防の対策を徹底するよう呼びかけています。病院のホームページによりますと宮崎県日南市の春光会東病院は、平成11年に開設され、内科、胃腸科などが専門の病院で、ベット数は64となっています。病院では、ノロウイルスによる集団感染の発生と、当分の間、入院患者への面会ができないことを知らせる紙が正面玄関に貼り出されています。病院には、時折、入院患者の家族が訪れ、インターホンで職員と話をしたり、着替えなどを渡したりしていました。入院している夫の着替えを持ってきた女性は、「病院から夫は感染していないと説明を受けていますが、心配なので詳しく話を聞きたい」と話していました。
春光会東病院によりますと、亡くなった患者6人はいずれも高齢で体が不自由なため病院ではいつもベッドで寝ていたということです。そして、今月14日に最初の1人が死亡したあと、22日までの9日間で6人が相次いで亡くなったということです。最初に死亡した患者は亡くなる2日前の今月12日に発熱とおう吐の症状を示しましたが、病院側はノロウイルスの感染とは思わず、体調不良として対応したということで、その結果、ウイルスの感染を拡大したおそれがあるとしています。また、患者が相次いで亡くなる事態について、県へ報告したのは22日が初めてだったということです。春光会東病院の宮路重和理事長は「爆発的に患者が増えたので、対応に追われて死亡報告というのがきちんとできなかった。申し訳なかった」と話していました。
ノロウイルスは、感染力が非常に強く、ウイルスが付いた手や食べ物などを介して口から感染し、激しいおう吐や下痢を引き起こします。健康な大人の場合は、数日で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは脱水症状を起こして重症化したり、吐いた物をのどに詰まらせて窒息し死亡したりするおそれがあります。特に、ことしはノロウイルスの新しい遺伝子変異が全国で確認されていることから、感染が広がりやすくなっていると指摘されています。
国立感染症研究所によりますと全国の小児科から報告されるノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者は8週連続で増加し、今月9日までの1週間で1施設当たり19.62人と去年の同じ時期の2.2倍で、この10年では全国的な大流行となった平成18年に次ぐペースで増えています。都道府県別では今回、ノロウイルスの集団感染が明らかになった宮崎県が35.94人ともっとも多くなっています。また先月下旬から今月にかけてノロウイルスの感染で死亡したとみられるケースが、大阪府と大分県、それに京都市の病院で確認されていて全国で、少なくとも70代から90代の5人のお年寄りが死亡しています。
国立感染症研究所では流行は年末にかけてさらに拡大するとみて手洗いをこまめに行うとともに、下痢やおう吐などの症状のある人が出た場合、マスクや手袋をした上で、周囲を塩素系の消毒剤で拭き取るよう呼びかけています。
宮崎県日南市の「医療法人春光会 東病院」で6人が死亡していたことが23日明らかになったノロウイルスによる院内集団感染。県は「報告の遅れや汚物処理の不手際など病院の衛生管理が感染拡大の一因」と指摘した。病院側は「申し訳ない」としながらも「一医療機関では財政的に不可能」と開き直った。
病院側と県は県庁で記者会見。同会の宮路重和理事長は「当初はノロウイルスを疑わなかった。患者が爆発的に増え、対応で手いっぱいだった」と強調した。
理事長によると、病院は患者や職員のノロウイルスへの感染を受け、日南保健所に報告。18日に立ち入り調査を受けたが、14〜17日に3人が死亡したことは「ノロウイルスと関係ない」と判断し、その場では報告しなかった。しかしその後も死者が相次ぎ、22日に同保健所が2度目の調査を実施した際に伝えた。
更に県や病院によると、看護師らが使う感染予防対策用の医療用エプロンについて、保健所は使う度に廃棄するよう指導していたが、病院は「品薄で入手が困難だった」として、汚れがひどいもの以外は一日中使っていた。県は「汚物処理に不手際があったのが一つの原因」とした。