宮城県が東日本大震災の県内被災市町で内陸・集団移転を予定する地区数をまとめたところ、県の当初試算(昨年6月)の約3倍となる176地区に増えた。漁村が点在する半島部などで大規模集約に反発の声が上がり、対象地区が細分化した。対象地区の増加で、住民の合意形成や移転先の造成を進める被災自治体の人材不足が深刻化し、県はコンサルタントなど民間企業の力を借り、集団移転を進めたい考え。一方、県が想定した半島部の集落を大規模化してインフラ整備を行う方針は事実上、見送られる。
自治体が集団移転に利用するのは国の「防災集団移転促進事業」。県は昨年6月、復興計画を検討する中で、沿岸部の居住地を大規模に集約した上で高台移転し、沿岸の産業エリアに通勤する「高台移転・職住分離」の方針を打ち出した。
この大規模な集約化を前提として、昨年6月、移転を予定する地区数を59地区(約1万3900戸、移転先総面積772ヘクタール)と試算した。しかし11月、国の3次補正予算の成立と復興特区法の概要が判明したことを踏まえて被災自治体の意向を再調査したところ、震災前の集落単位の移転が中心となっており、対象が176地区(約1万6000戸、同約1000ヘクタール)になった。
対象地区の大幅増加で、自治体の人材不足が深刻となった。集団移転の実現に向けては、職員が移転先の土地取得交渉、取得した土地の測量や設計といった作業を、住民と合意形成を図りながら進めなければならない。県は昨年12月に被災15市町について計約1260人の職員派遣を政府に要望した。
さらに県は、これまで自治体が担ってきた移転作業を民間コンサルタント会社に肩代わりさせられないか模索している。
県幹部
住民への説明会の開催なども含め、被災市町と連携して、5地区程度ごとに移転作業を一括して民間コンサルに委託できる体制を整えたい。
◇防災集団移転促進事業
自治体が集団移転を実現するために利用する国土交通省の国庫補助事業。政府の3次補正予算成立で制度改正され、補助対象の移転規模は原則10戸以上から5戸以上になった。新たな宅地を造成する費用は3次補正で計上された1・5兆円の復興交付金などが充てられる。
(2012年1月16日 毎日jp(毎日新聞)「東京朝刊東日本大震災:宮城被災地、集団移転176地区に 県試算3倍 集約方針、困難」より)