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神奈川県知事同行被災地ルポ:がれきの県内受け入れ、放射能不安の解決策探る がれき搬入に反対相次ぐ

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 東日本大震災から10カ月。巨大津波が押し寄せた東北の被災地は今、冬の荒野に復興の槌音(つちおと)を響かせている。しかし依然として苦慮しているのは、がれきの処理方法だ。県外搬出の壁となっている放射能への懸念に対し、住民理解を得られる解決策は見いだせるのか―。神奈川での受け入れを表明している黒岩祐治知事が現地を視察。同行して見た広域処理の取り組みをリポートする。

「前を向いて進みたい。でも、毎日がれきの山を見るたびにあのときの思いが胸に迫ってきて、一歩を踏み出せねぇんだ」

 あの日、沿岸部を襲った津波で壊滅的な被害に見舞われた岩手県宮古市。宮古湾を望む仮設住宅に暮らす宇都宮拓治さん(81)は、そう言って澄んだ空を見上げた。

 目の前には赤茶けたがれきの山。仮置き場となっている陸上競技場に、その面影はない。震災直後から高さ5メートルほどの姿は変わらぬままだ。粉じんや悪臭はなく、鉄片を放り投げる乾いた音だけが響く。

 倒壊家屋の残骸や家具、電化製品、衣類…。「がれきには亡くなった人やここで暮らしてた人の思いが詰まってる。撤去されない限り震災当時と同じ心境だ」。市内で発生したがれきは約71万トンに上り、通常処分量の35年分に相当する。

 同様に仮置き場となっている宮古港の藤原埠頭(ふとう)。ここには分別場も併設され、津波で傾いた倉庫の横を鉄くずを積んだダンプが行き交う。昨年11月からは東京都に向けて搬出されており、都が現地の分別指導、放射能測定、搬出を担う。

 コンクリートや金属類の分別が済み、コンテナに積む前の廃材などが集まるストックヤード。都の担当者は、がれきの中から採取した木くずなどをシートに広げ、廃棄物が放出する放射線量率を測る準備を始めた。

 シート上で混ぜ合わせた廃材をサンプルとして袋詰めし、事務所内の測定箱に投入。冷蔵庫ほどの箱は厚さ3ミリの鉛製だ。自然界にある放射能に影響されない密閉空間となり、投入前の空間線量率と比較する。

 ホワイトボードに書かれた測定結果は0・003マイクロシーベルト。都独自の受け入れ基準0・01を大きく下回った。担当者は「(基準値超で)搬出できなかったケースはない」。

 このほか、野積み状態と積載後にも放射線量を測定。都内でがれき焼却時に出る排ガスの放射能濃度などとともに公開している。

 宮古市は東京電力福島第1原発から約260キロの距離にあり、首都よりも遠い。それでも、山本正徳市長は「受け入れ先に迷惑が掛かる危険なものは、絶対に運び出したくない」と話す。

 都が受け入れを表明したのは昨年9月。そのときは、都民から約3千件の反対意見や問い合わせが寄せられた。しかし、「きちんとデータを示して説明を尽くすことで理解が広がった」(都担当者)という。

 神奈川での受け入れ構想は、横浜や川崎などで焼却処理し、焼却灰は県の最終処分場(横須賀市)などに埋め立てる仕組み。地元では、放射能をめぐる不安の声が上がっている。

 黒岩知事は「ここで見たシステム的な放射能対策をきちんと説明すれば、神奈川でも理解を得られると確信した」と、あらためて強い意欲を示した。

 東京都は3年間で50万トン受け入れる予定。宮古市からは3月末までに約1万トン搬入する計画で、すでに1200トンを受け入れ済み。同市内のがれきは、全体のうち60万トンを地元岩手県で処理し、残り分を国が主導する「広域処理」で県外に搬出したい考えだ。都の放射性物質への対応は、焼却灰埋め立ての国基準(1キログラム当たり8千ベクレル)を適用。一方、神奈川で受け入れるがれきは100ベクレル以下を条件としている。



 東日本大震災の被災地のがれき受け入れを表明している黒岩知事は15日、県の管理型最終処分場「かながわ環境整備センター」がある横須賀市芦名で、地元住民を対象とした説明会を開催した。会場からは、受け入れ反対の意見が相次いだが、知事は「東北を支援しようという気持ちは共有していた。新たな知恵を出しながら、誠意を持ってお願いしていきたい」と述べ、改めて受け入れに理解を求めた。

 会場には、300席が用意されたが、510人の住民らが参加。知事は岩手県宮古市で東京都が実施している放射性物質の測定方法や、同センターで埋め立てた場合の安全性について住民に説明した。

 その後、住民との質疑応答では「がれきの受け入れではなく、他に支援する方法があるのではないか」「無条件で反対」などと受け入れに反対する声が相次いだ。知事は「(住民の意見は)厳しかったが、誠意を尽くせば必ず理解を得られると思う」と話した。

 また、同センターを建設するにあたって県と芦名町内会は2002年8月、廃棄物は県内から排出されたものに限るとする協定書を交わしており、知事は「協定書の改定は地元との合意の前提」とした。

 県によると、横浜、川崎、相模原の3政令市で年間10万トンのがれきを焼却した場合、同1万トンの焼却灰の埋め立てを想定している。


(2012年1月15日 カナロコ「知事同行被災地ルポ:がれきの県内受け入れ、放射能不安の解決策探る」より)
(2012年1月16日 読売新聞「がれき搬入に反対相次ぐ」より)


























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