東京都板橋区のマンションで主婦の荒井久美さん(34)が殺害された事件で、警視庁高島平署捜査本部は1日、同区成増4、無職、松尾元気容疑者(22)を窃盗容疑で逮捕した。松尾容疑者は「やってない」と否認しているという。捜査本部は、空き巣目的で荒井さん方に侵入した松尾容疑者が、帰宅した荒井さんを殺害したとみて関連を調べる。
捜査本部などによると、松尾容疑者は容疑を否認する一方、あいまいな供述を繰り返し、事件当日の行動についても説明が変遷しているという。
逮捕容疑は11月21日午後5時ごろ、豊島区南池袋1の現金自動受払機(ATM)で、荒井さんのキャッシュカードを使い、現金25万8000円を引き出したとしている。
捜査関係者らによると、松尾容疑者は現金を引き出す直前までスーツ姿だったが、ATMの防犯カメラには、マスクなどで顔を隠し、セーター姿で映っていた。その後、マスクなどを外してスーツに着替えたことが確認されており、捜査本部は松尾容疑者が変装したとみている。
荒井さんは現金が引き出された約1時間半前の同日午後3時半ごろ、刺殺されたとみられ、携帯電話や貴金属などが無くなっていた。
捜査関係者によると、松尾容疑者は福岡県出身。今年4月から6畳1Kタイプの現在のアパートに入居していた。大家の男性によると、家賃は約5万円。11月分を滞納し、保証会社から振り込まれたが、12月分は11月30日に本人名義で入金があったという。
今年1月から池袋駅近くのカラオケ店にアルバイトとして勤務し、3月には成増駅前にオープンした系列店に移ったが、9月には辞めていた。同僚によると、勤務態度はまじめだったという。
事件から1週間が経過した先月28日。現場マンション近くの東武東上線成増駅では、雑踏の中から特定の人物を探すことを専門とする「見当たり捜査員」が張り込んでいた。既に捜査線上に浮上していた松尾容疑者の顔を記憶した捜査員は、改札を通る乗客らの姿を追った。「あの男だ」。よく似た男が駅近くにいるのを発見。後を付け約500メートル離れたアパートに帰宅するのを確認した。男が捜査員に気づくことはなかった−−。
容疑者が浮上したきっかけは、防犯カメラ映像。今回の事件では多数の場所で「不審な男」が映り、警視庁は映像解析による割り出しに力を注いだ。
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現金自動受払機(ATM)の防犯カメラの映像で確認できるのは、松尾元気容疑者であっても、誰のキャッシュカードかとか、現金25万8000円ではない。また、多数の場所で防犯カメラ映像が松尾元気容疑者だと確認されても、それだけで、容疑者が事件と繋がっているという証拠にはならない。