東京都板橋区のマンションで主婦の荒井久美さん(34)が胸などを刺され殺害された事件で、容疑者とみられる20〜30代の男がその翌朝、品川区内に一時立ち寄っていた可能性が高いことが捜査関係者への取材で分かった。警視庁高島平署捜査本部は、東武東上線池袋駅近くで荒井さんの口座から現金を引き出した後、品川方面に向かったとみて周辺を重点的に調べている。事件は28日で発生から1週間を迎えた。
捜査関係者によると、事件翌日の22日午前7時過ぎ、容疑者が品川区内にいた疑いが強いことが、周辺への聞き込みや関係機関への捜査などから判明。23日午後には、容疑者と似た男が同線池袋駅の改札を通過し、ホームに向かう姿が防犯カメラに映っていた。捜査本部は、品川区の駅などから防犯カメラの映像を回収して解析を急ぐとともに、捜索範囲を広げて容疑者の行方を追っている。
事件は21日午後3時半〜同50分ごろ発生した。容疑者とみられる男は帰宅直後の荒井さんを小型のナイフで刺殺。財布や携帯電話、貴金属などを奪って逃げたとされる。同5時ごろには約10キロ離れた池袋駅近くにあるコンビニの現金自動受払機(ATM)で、不審な男が荒井さんのキャッシュカードを使って現金約25万円を引き出したことが確認されている。
捜査本部によると、黒っぽいスーツにマスク姿の若い男がその直前、付近の衣料品量販店でニット帽やマフラー、ズボンなどを購入。ATMの男と同一人物とみられ、量販店の裏にあるパチンコ店で着替えた上、「変装」して現金を引き出したとみられる。
荒井さん方周辺では事件の約1週間前の15日ごろ、5〜6件の空き巣が連続発生しており、一部の現場で採取された足跡は荒井さん方に残っていたものと似ていた。一方、事件直前にスーツ姿の男が荒井さん方のインターホンを押していたほか、数日前には付近のアパートをのぞき込む20〜30代の男も目撃された。捜査本部は、容疑者が空き巣の常習犯だった可能性が高いとみて過去の手口を調べるとともに、逃走経路の特定を急いでいる。
現場で見つかった物証などから、警視庁高島平署捜査本部は、事件に関与したとみられる20代前半の男を特定したことが29日、捜査関係者への取材で分かった。警視庁が事情聴取する。
荒井さんは21日夜、板橋区赤塚3丁目の自宅マンション2階で殺害されているのが見つかった。胸などに刃物で刺された傷が十数カ所あり、室内が物色されていたことから、捜査本部は空き巣目的で侵入した男が殺害したとみて捜査していた。