沖縄県で生まれ、高校卒業まで過ごしました。忘れられないのが中学1年の担任だった山里先生です。50代くらいの男性で、国語を教えていました。普段はニコニコ笑っているけど、勉強はしっかりさせる、ちょっと厳しめの先生でした。
中学に入って最初のテストを迎えた時、暗記しなければいけないことがたくさんあり、どうしようと思っていたら、先生は「教科書を10回読むより、1回でも書いて覚えろ」と言いました。「不思議なもので、自分の書いた文字だと汚くてもきれいでも、頭にそのままインプットされる」と教えてくれました。
ただ、それを実行する子はあまりおらず、私も「本当にかな」と半信半疑。「書くのは面倒くさいし、何回も読めば十分だろう」と、やってみないまま過ごしてしまいました。
それでも、先生の言葉はずっと心に残っていました。高校2年になって覚えにくい部分がある教科のテストを受けることになった時にふと、「1回書いてみようかな」と思ったんです。そうしたら本当に文字がすらすらと頭に入ってきました。早くやっておけば勉強がもっとできるようになっていたかもしれないと後悔しました。
この方法はデビュー後間もなく、NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」のヒロインを演じた時にすごく役立ちました。弟役の山田孝之君とメーク室に並んで座り、長いセリフをノートに書き込んで覚えました。ノートを何冊使ったか分からないほどです。最初は緊張でうまく演技できませんでしたが、先生に教わった方法でセリフを暗記したことで、徐々に自然な動きができるようになりました。
今も長いセリフは書いて覚えます。演技中にセリフを思い出す時は、台本ではなくて自分で書いたノートの字が頭に浮かぶようになりました。まさに先生の言った通りで、書かないと不安になるくらいです。
先生は「本を読みなさい」ともよく言っていました。上京してから読むようになり、今は月に3、4冊読むこともあります。ミステリーや恋愛ものが中心で「この場面で登場人物はどんな顔をしているんだろう」とか想像しながら読むことが楽しく、演技にも役立っています。
先生に接していた時は気付かなかったけど、その教えは今、すごく生きています。長らくお会いしていませんが、「ありがとうございました」と伝えたいですね。