米東海岸に激しい風雨をもたらしているハリケーン「サンディ」は29日、ニュージャージー州南部に接近、同日夕(日本時間30日朝)にも上陸する可能性が高まった。ニューヨーク、ニュージャージー両州などで約17万戸が停電、沿岸部では冠水の被害が広がった。
ニューヨーク市や首都ワシントンに大きな被害をもたらす恐れがあり、両都市は厳戒態勢を取っている。オバマ大統領は緊急会見し、国民に最大限の警戒を呼び掛けた。
ニューヨーク市周辺を受け持つ電力会社は、同市の広い範囲で停電が起きる可能性があるとして注意を喚起した。
米国東部沿岸に接近している巨大ハリケーン「サンディ」により、29日に引き続き30日も米株式市場が休場になるなど、影響が広がっている。また大統領選挙が8日後に迫るなか、オバマ大統領と共和党のロムニー候補がともに遊説を取りやめるなど、政治面での影響も出ている。
米国立ハリケーンセンターによると、29日米東部時間午後2時(日本時間30日午前3時)ごろ、サンディの中心部はニューヨーク市の南南東約285キロの沖合いにあり、北東に向かって時速44キロのペースで移動している。29日夕方にも東部沿岸に上陸するとみられているが、その後は勢力を弱め、前線、もしくは低気圧になるとみられている。
サンディの接近を受け、NYSEユーロネクストは、29日に引き続き、30日も株式取引を停止すると発表。31日は状況次第で再開するとした。30日は、米株式、債券、オプション・デリバティブ(金融派生商品)の各市場と合わせ、当該市場が休場となる。
ナスダック市場を運営するナスダックOMXグループも、ナスダック株式市場とその他のナスダックOMX傘下の米取引所の取引を30日も停止すると発表した。
米株式市場が全面的に休場となるのは、2001年9月11日に発生した同時多発攻撃以来。
また、米金融・債券市場は29日は半日取引となった。さらに、ニューヨーク連銀は、ハリケーンの接近で多くの米金融市場が休場となっていることを受け、30日に予定している国債買い入れオペを延期すると発表。
30日は、2036年2月から2042年8月までに償還を迎える国債、17億5000万─22億5000万ドルを買い入れるオペを実施する予定だった。NY連銀は、国債の売却・買い入れオペは31日には再開されるとの見通しを示している。
一方、労働省は10月の米雇用統計を予定通り11月2日に発表する意向を持っていると発表した。
ホワイトハウスはこの日、オバマ大統領は30日に予定していたウィスコンシン州での遊説を取り止め、ワシントンでハリケーン対応にあたると発表。声明で「大統領は30日、ワシントンにとどまり、ハリケーン『サンディ』の影響を注視しつつ対応する」とした。
ロムニー共和党候補も29日夕にウィスコンシン州で、30日にアイオワ、フロリダ両州で予定していた遊説を取り止めると発表した。
これら3州はサンディの予測進路からは外れているが、オバマ大統領が「サンディ」への対応に注力することを理由に遊説を中止していることもあり、選挙運動を継続することで国民に「無神経」との印象を与えることを避けたい考えとみられる。
サンディの接近に伴い、橋梁やトンネルが閉鎖され、アムトラックが東海岸の運航をほぼ全面的に運休するなど、影響は交通機関にも広がっている。
米政府は首都ワシントンで働く職員のうち、非常事態に関連していない職員を自宅待機としている。