兵庫県尼崎市のドラム缶事件で起訴された角田美代子被告(64)の周辺で行方不明になった7人について、角田被告の周辺関係者が「6人が殺害され、兵庫のほか香川、岡山に捨てられた」「1人はコンクリート詰めにして岡山の海に捨てた」などと証言していることが16日、捜査関係者への取材で分かった。県警は関係者らの聴取を進め場所を特定した上で、近く捜索に乗り出す方針。
県警は昨年11月、尼崎市の貸倉庫でドラム缶からコンクリート詰めの無職、大江和子さん(当時66)の遺体が見つかった事件で、傷害致死罪などで起訴された角田被告の周辺で20〜80代の男女7人が行方不明になったとみている。
角田被告の周辺関係者は「数年前に尼崎市の住宅に遺体を遺棄した」「6人は兵庫のほか香川、岡山に捨てられた」などと証言。県警は海に遺棄されたとされる遺体はこのうちの1人の可能性があるとみている。
県警は13日以降、尼崎市の住宅を家宅捜索し、3遺体を発見。司法解剖の結果、うち2人は女性で70歳前後と20〜30代、もう1人は60代の男性と判明した。3遺体はいずれも死後数年が経過し、骨折など目立った外傷はないという。
この住宅には角田被告の義理の娘、瑠衣被告(27)=窃盗罪で公判中=の祖母(87)や長男、次男らが居住していた。祖母は行方不明となっているが、県警は関係者の証言などから3遺体は祖母らではないとみている。捜査関係者によると、3遺体のうち2遺体は高松市に住んでいた瑠衣被告の姉(29)と60代の伯父の可能性があるという。
3人の遺体が見つかった民家の家族や複数の行方不明者との関わりが指摘されている角田(すみだ)美代子被告(64)は、近所とトラブルを起こしたりクレームを付けるなどの行動を繰り返していた。近くの住民は「周りを奴隷のように服従させていた」と話す。証言からは、恐怖心を使って他人の心を支配しようとした姿が浮かぶ。
近くの住民男性によると、10年近く前、角田被告が住んでいたマンションの管理人の女性が、角田被告の親族を名乗る人物をマンション内に入れたことに角田被告が激高したことがあった。執拗(しつよう)に抗議され、女性は結局、管理人を辞めたという。角田被告宅内を玄関のすだれの隙間(すきま)からのぞいたなどと隣室の住民に因縁を付け、何度も警察を呼ぶ騒ぎになったこともあった。子どもを怒鳴りつける場面もよく目撃されていた。男性は「住民はみんな角田被告を恐れていて、被告の住む階に停止したエレベーターは避けるようにしていた」と話す。
別の知人女性は「スーパーで買い物をするのを見かけたが、一緒にいた男は奴隷のようになんでも言われた通りにしていた」と証言する。
ドラム缶詰め遺体事件で死体遺棄罪で有罪判決を受けた角田被告のいとこの男(38)の公判では、角田被告が亡くなった大江和子さん(当時66歳)の家庭にクレームをきっかけに入り込む様子を、大江さんの次女(41)の元夫(42)が証言した。
元夫によると、09年4月、電鉄会社に勤務していた元夫は角田被告から「電車のドアに(ベビーカーが)挟まった」とクレームを受けた。対応のため自宅を訪れると、いとこの男を「元ヤクザ。怒らせたら何するか分からん」と紹介され、脅された。しかし、話し合いの後に「途中で時計を見なかったのは偉い」とほめられ、「次第に心を許すようになった」という。その後、「個人的な相談をして感謝の気持ちを持つようになった」結果、家庭に入り込まれていった。