新井白石は鎖国思想家である。彼の有名な思想に「賢愚を分ける」がある。これは一人の人間が有する思想を「賢愚」に分けて、賢を受容し、愚を排除するという意味である。大半の沖縄県民にとって、基地(軍隊)は愚であり排除すべきだとするが、一方でアメリカ人やアメリカ文化は賢だから、これを受容すべきだとする。この状態を沖縄県民は国際交流と呼んでいる。
しかし、実際には賢愚を分けることはできない。沖縄県民が愚かだとする基地が存在するのは、沖縄県民が賢だとしているアメリカ人やアメリカ文化あってのことである。その賢愚は分かつことはできない。そのことは一人の人間に対しても同じである。そしてアメリカには賢愚を分かつ思想は存在しない。
■普天間基地司令官・フリン大佐 オスプレイ配備の重要性語る(週刊ポスト2012年9月7日号)
オスプレイ配備問題で揺れる沖縄・普天間基地。その内部に初めて日本のカメラが入った。基地の中ではいま何が起こっているのか、ジャーナリスト・笹川英夫氏がリポートする。
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広い基地内をまわって感じたのは、オスプレイ配備に向けて特に準備している様子がないことだ。普天間基地司令官のフリン大佐にこの疑問をぶつけてみた。
「作業スペースの準備を除けば、特に飛行場で変更を要する所はありませんし、オスプレイ受け入れ準備は基本的にできています」
配備についてはどう思っているのか。
「オスプレイは必ずや日米両国の安全保障に重要な貢献をするでしょう。実際オスプレイは、アフガンやイラクでも活躍しました。だからこそ、両政府がオスプレイ配備に合意したのだと考えています」
いま沖縄では反米軍機運が高まっている。しかし基地では、常日頃から地元とのコミュニケーションを大切にしているという。
「昨年から年に4回、宜野湾市と、市民にとって重要な問題を話し合っています。いまは、救急車などの緊急車両が基地内を通過できるよう進めています。また、地元の祭りに参加したり、9月には市長も参加する野球チームと対戦する予定です」
そう話す、フリン大佐の部屋には地元から贈られたという日本人形が飾られていた。
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救急車などの緊急車両が基地内を通過できるような話合いを普天間基地司令官と行うのは当たり前のことである。ほかの行政上などの問題で話合いを行うのも自然なことである。また、民間人と軍属の家族や子息などとのさまざまな交流も普通のことだろう。さらに、防衛省や防衛局、外務省などが軍属を食事会やスポーツなどの交流会を催すことも自然なことだろう。しかし、基地の移設やオスプレイの配備に反対している自治体の首長などが、業務以外の場で軍属から「市長も参加する野球チームと対戦する」などといった状態であるのは不思議としなければならないだろう。賢愚を分かつ国際交流のつもりなのだろうか。
普通の神経の持ち主なら、少なくとも、基地の移設やオスプレイの配備に反対している間は、食事会などの懇親やスポーツを通じての交流などの一切を控えるのではないだろうか。