先日、下北沢『Elegant&Gothic 占館 月光』オープン2周年記念イベント「Club Luna Rossa(赤い月)に行ってきました。
占館『月光』は、下北沢の商店街の一角にある、隠れ家的な占いブティック。コンセプトはズバリ、Elegant&Gothic。店内にはゴス&ロリ系ファッションアイテムやドールがディスプレイされ、魔界に足を踏み入れたような錯覚に陥ります。また『月光』は、在籍する鑑定士のキャラクターがツンツンに立っているのも特徴。タロットをベースに、霊感やカラーセラピーなど、それぞれの得意分野を取り入れた占いを提供する猛者ぞろい。さらには、ビジュアルの点でも抜かりなし、です。
この日のイベントは午前0時スタート、「黒ミサ」と「降霊会」のダブル開催! さまざまなジャンルの個性派占い師が集う『月光』ならではの豪華企画です。しかも、バックアップは東京・秋葉原にあるオカルトショップ『魔術堂』!
イケメン魔術師KATORが支配する魔窟『魔術堂』。占術・呪術用品や魔術道具、魔術書などの資料はもちろん、カバラやケルトモチーフのアクセサリー、ゴス系アート雑貨も充実。オンラインショップには常時数千点の商品が掲載され、見ているだけでも楽しめます。クールなスピ系アイテムをひとつひとつ眺めていると、ついポチりたくなるので、魔法にかかりやすい深夜に見るのは避けたほうが無難かも。
そんなわけで、ある意味“最凶”タッグなコラボレーション・イベントが、今宵の「Club Luna Rossa(赤い月)」。月は、相反する事象を象徴します。不実と純潔、母性と狂気……等々。また、真珠や銀のシンボルでもあります。そしてRossa=赤は、血や炎、悪魔、裏切り者……と、不吉な連想を喚起する色。
おりしも仏滅、深夜の地下クラブで何が起きるのか? 濃すぎるキャラの占術師と魔術師は、迷える子羊たちをどう料理するのか?? 怖がりのくせに好奇心には必ず負ける筆者は、果たして無事に戻れるのか!? 引き返すなら今のうちだ! が、……もう終電がありません。
会場は都内・中野にあるブックカフェダイナー『OMEGA ALGEA』。会場内は意外と明るく、ひとまず安心。それでも、むき出しの天井にぶら下がるシャンデリアや、ほのかな灯りを反射するたくさんの鏡がネオ・ゴシックな雰囲気を醸し出しています。
まず目につくのは、中央の魔方陣と、その正面にしつらえられた祭壇。黒マントのスタッフが「魔法陣に入らないでください!」と注意を呼びかけています。法陣は『月光』店主・Chloeの手描き。黒地に白の、見たこともない文字や模様が並んでいます。祭壇には、「ワンド」「剣」「カップ」「ペンタクル」のタロットエレメントを中心に、黒魔術アイテムがてんこ盛り。すべて『魔術堂』プレゼンツの純正品とのこと。
「入るな、危険!」の魔方陣。さっき、ちょこっと入っちゃったよ……
サタンの像を中心に、芒星などのオカルトアイテムが並ぶ祭壇。聖餐用のパンとワインも用意されています
ミサ開始の前に、黒マントのスタッフが魔法陣の前であやしげな動きを……と思ったら、儀式前のお清めのようなもの、のようです。助祭をつとめる占い師・稗田おんまゆら曰く、「今宵の黒ミサは、由緒ある魔術書『ソロモンの大いなる鍵』に忠実に行われます。みなさんに災いが起こらぬようにするのが、我々の役目でございます」。なるほど、黒魔術・黒ミサ・降霊会と、あえてタブーを犯し続けるイベントなだけに、危機管理が重要なのですね。
助祭・稗田おんまゆら氏が、天使の言語であるエノク語で魔法書を読み上げます
いよいよ黒ミサ開始! 儀式を執り行うのは、剣を手にした司祭・尚叡、エノク語(天使の言語)とヘブライ語を駆使する助祭・稗田おんまゆら、そして魔術師KATORの3名。司祭の尚叡はビジュアル系占い師だけに、じつにサマになります。そして司祭が剣をかざし、ゲストの中に隠れている生け贄を探し始めます。場内に緊張が走る! 突如、剣がピタリと止まり「ここにいたか雌豚っ!」と、生け贄が引き出され、魔法陣の上に転がされました。
選ばれた生け贄は、ワインを降りかけられ意識を失い中。この間、司祭らが魔王を召喚します
悪魔が召喚されると、邪悪な聖餐の始まりです。「心に願いごとや悩みを持つ者は、並ぶがいい」という呼びかけに応じ、ワインとパンを求める子羊たちが司祭の前に並びます。「願いはかなえられるであろう」と言い切る司祭。うーん、ゆらゆらと立つ生け贄の様子にビビって傍観していたけれど、キッチリ聖体拝領して願いごとをすればよかったかなぁ。
黒ミサ終了後の「お清め」がすむと、魔法陣内は立ち入りオーケーに。降霊会が始まる午前3時過ぎまで、サロンタイム&シャンソンライブ。場内には、『月光』所属の占い師にワンショット占いを頼むゲストがチラホラ。目玉スイーツや似顔絵などの販売ブースにも列ができています。今夜のライブはシャンソンだから、たぶんオシャレな感じよね。ちょっと息抜きできるかな? と思ったら、甘かった……。
スイーツを食べながらシャンソンを聴いて〜♪なんて優雅な気分にはなれない、リアル過ぎる目玉
シャンソン担当の『蜂鳥姉妹』は、シャンソン歌手・蜂鳥スグルと蜂鳥あみ太のユニット。プラス「狂犬ピアニスト」佐藤真也が繰り広げるライブは、ベッタリまとわりつく「死」のイメージをぬぐえぬままに粛々と進行。ポップスからクラシックまで、カストラートのイメージで展開するスグル、ドスの効いた声とビジュアルで場を凍りつかせるあみ太、そしてひたすら容赦なく絡む精緻なピアノ。ぜんぜん息抜きにならんわ!
ライブ中の蜂烏スグル。後ろはピアニストの佐藤真也。気が狂ったような演奏が、これからの降霊会の期待を盛り上げます
ライブが終わると、先ほど黒ミサを行った3人を中心に、スタッフが降霊会の準備を始めています。司祭の衣裳を脱いだ尚叡は、真剣な表情で赤いタロットカードをチェック中。稗田氏はワンドを手に、なにやらあやしい動きを見せています。いったい何が始まるのか、まったく予想がつきません。(後編に続く)
魔術師が執り行う午前3時の降霊会に、あの博士の霊が降りてきた!?
午前3時をまわり、いよいよ降霊会! このタイミングでの開始は、ルシファーに敬意を表してのこと。ルシファーはラテン語で「金星」の名を持つ天使。明けの明星の出現を待つ子羊たちの表情には、不安と期待が見てとれます。
先ほどの黒ミサと違うのは、取り仕切るのが魔術師KATORであること。稗田・尚叡の両名は、いわば霊媒です。魔術師KATORがゲストを集め、「魔法陣の周りを囲むように立ち、手をつないでください」と指示します。筆者も雰囲気にのまれて参加。位置は、なんと魔術師KATORの隣です。イ、イケメン魔術師に手ぇ握られちゃったよ。どどどーしよ。いかんいかん、邪念は……。
霊を降ろす前に、魔術師から「降霊」についての説明がありました。
・降霊ブームは19世紀半ばのアメリカで起きた「ハイズビル事件」がきっかけである。
・この事件により、霊とコンタクトしようという発想がはじめて生まれた。
・背景にあるのは、事件の数年前、モールス信号による通信が成功した件。人類が通信というツールを手にしたことで、霊に呼びかけることを思いついたのだろう。
「……いうわけでブームとなった降霊会ですが、インチキが多いので、現在では少なくなっています。今夜は、当時の雰囲気を味わいつつ、楽しんでいただきたいと思います」
そして、霊媒となった稗田が魔法陣の中央へ進み、降霊が始まりました。魔術師KATORの指示どおり目を閉じると、自分がどこにいるのかわからないような、不思議な感覚に陥ります。
魔方陣の中で倒れる、霊媒・稗田氏。セーラー服姿なのは『エコエコアザラク』の主人公・黒井ミサのコスプレ
やがて足元でガタガタッ、という大きな音が! 思わずギュッと目をつぶる筆者。すかさず魔術師KATORが「そこに誰かいますか?」と呼びかけます。
ゆらりと立つ稗田が、はっきりとした口調で語り始めました。「人は私を魔女と呼ぶ……私は薬草の知識を、人々に役立てるだけ……」。どうやら稗田に降りたのは、数十年前の女性で、今でいう薬剤師のようです。悩める人々に助言をしていたことから、占いもする魔女、と思われていたのでしょうか。憑依された稗田は、円陣を組むゲストに声をかけては勝手に占っていきます。ひとりの若い男性には「あなた、耳に気をつけて!」と命令口調でアドバイス。
ゲストは前のめり状態で、うっかり手を離しそうになる人も。すかさず魔術師KATOR、「手を離さないでください!」と一喝。つないだ手をギュッと握られ、ズキューンな筆者。あら、あらら? 気がつくと椅子に座っていた……貧血を起こしたみたい。降霊はまだまだ続いていますが、おとなしく観覧することにしました。
続いて登場した尚叡にも、誰かが降りたようです。魔術師KATORが聞き出したところによると、霊の正体はオカルティズムのカリスマ、ジョン・ディー!!! ディー博士と言えば、あの魔道書『ネクロノミコン』の作者ではありませんか。
ジョン・ディー博士は、16世紀から17世紀にかけて実在したイギリスの学者です。専門は錬金術、占星術、数学。要するに、有名な魔法使い。16世紀において、科学は魔法のようなもの。うろんな魔術師として投獄されたこともある、受難の科学者なのです。なおディー博士を『ネクロノミコン』の作者としたのは、ラヴクラフトの創作です。念のため。
さて、そんなメジャーな人が降りてくるとは、いやはや大変なことになりました。ディー博士は日本語も堪能らしく、ゲストに次々と託宣を授けます。「もう疲れた……」と去ろうとする博士を、。魔術師KATORが引きとめるひと幕も。魔術師おそるべし。
サロンタイムには、『月光』在籍の占い師が占いに応じてくれます
降霊会がお開きになった後は、始発までフリーなサロンタイム。降霊会で占いを経験した人も、しなかった人も、お目当ての占い師さんに鑑定をリクエストしています。せっかくだから筆者も、ワンショット占いを依頼してみました。結果は、「意中の男性とは、あなたの今後の生き方しだいでベストパートナーになれるかも」……つまり、すぐにラブラブにはなれないってこと、なのね。くすん。
気を取り直し、あたりを見回すと、稗田氏がちょうどエアポケットに。大役を終え、少々興奮気味のところを直撃し、カラクリもとい。感想を伺いました。
稗田 とにかく無事終了して安心しました。もっと長い時間やりたかったけれど、これ以上続けると意識が保てないと思ってやめました。自分の意識を霊に間貸ししている状態だったので。
――先ほど、男性に耳のことをおっしゃっていましたが?
稗田 ああ、はい。今きいたら、あの方、クラブのDJだそうです
――おお、大当たりですね。
稗田 とにかく無事に終わってよかった。寒くなったという人がいたくらいで
――私、貧血起こしましたが。
稗田 えっ……それ、憑いてる……かも
うわ、私って霊媒体質だったの!? 衝撃の事実!! でも大丈夫。終了後は、稗田氏謹製の生ミントをかじるグラウンディング(grounding=現実に戻す)で、気分スッキリ。アフターケアも万全なのですね、薬剤師が降りるくらいだから。
ここまで読んで、自分も降霊してみたいと思った人! 早まってはいけません。このイベントが無事終了したのは、プロ集団によるムダに周到な準備もさることながら、客層がオカルトに耐性があり、なおかつ親和性の高い子羊たちだったからなのです。『月光』では今後も降霊会の開催を続ける予定、とのことなので、参加のチャンスはまだまだあります。ご安心を。
イベントに出かけるのは困難、という人は、『魔術堂』の魔術書でお勉強し、魔術師を目指しましょう。一人前になるのには、300年くらいかかるかもしれないけど。
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