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村上佳菜子 シーズン前半のトラブル解消 四大陸選手権で見せた「大人への成長」

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「悔しいです。フリーも毎回ノーミスでできるくらいの練習をしてきたのに……」

 村上佳菜子の初めての四大陸選手権は、ちょっとほろ苦い味わいで幕を閉じた。

 ショートプログラムでは、全日本選手権と変わらぬ高得点を出して大満足の3位。しかしフリーでは、前日きれいに決めたはずの3回転−3回転など、いくつかのジャンプでミスが出て5位。総合成績は表彰台まであと一歩の4位。

 力を発揮しきれなかった主な要因は、体調不良。お腹の調子を崩し、ショートプログラム前日と当日には、ほとんど何も食べられない状態だった。初めて経験する標高1800mの高地での試合ということもあり、4分を滑るフリーは特にきつかったようだ。ただ、一部報道にあった酸素吸入措置は、取られなかったという。

「なんだかおおごとになっていて、日本からも心配する連絡があって、びっくりしました! そんな重大なことじゃなかったんですけど(笑)。

 ショートの前日は練習を早くあがって、本番の日の練習も少し控えめに。もう今日(フリー翌日)は大丈夫だけれど、何か食べるとまだ少しお腹がぐるぐるしちゃう……。

 日本で練習していた時は、体力は大丈夫だったんです。ミスしたとしてもワンミスくらいで、すごくいい演技がずっとできていたのに……。山田(満知子)先生も、悔しがっています。『絶対にニース(3月の世界選手権)では、頑張りなさいよ!』って」

 実際、体力が続いたショートプログラムの演技は素晴らしく、フリーも公式練習ではジャンプの調子が上々で、うまく調整ができている印象だった。オフシーズンの疲労骨折とシーズン前半の靴のトラブルの影響も、すっかり解消されていた。もし体調が万全だったら、そして、高地でなかったら、全日本選手権に続き「佳菜子完全復活!」をアピールすることができたかもしれない。

 今回特に印象に残ったのは、ショートプログラムの「ヴァイオリン・ミューズ」。

「全日本の前に靴を替えてから、調子がどんどん良くなって、ショートは全日本も今回も、うまくいきました! いつもは、『わ、試合だ』って気持ちになるけれど、名古屋でもいっぱい曲をかけて練習してきたので、自信があったんです。そのおかげでずいぶん落ち着いて、『試合だ』って気持ちにもならなくて、練習どおりの演技。もう中京大学のリンクで滑っているような感じでした(笑)。あとは苦手なアクセルだけに集中して、ステップは思い切りやろう!って。ショートプログラムは、だいぶ自分のものになったかな」

 氷から降りれば、ニコニコと明るい笑顔で自身の演技を語る17歳だけれど、氷上の村上佳菜子は完璧な「芸術家」だった。ショートプログラムのテーマである「苦難」「葛藤」を、これ以上ないくらいの凛々しさ、美しさで形にして、見る人にため息をつかせた。

「今年は大人の佳菜子!」を目標に選んだ曲だったが、「大人への成長」という以上にもっと劇的な表現の変化を、このショートプログラムでは見せることができたようだ。

 しかしフリーでは、打って変わってスピードもなく、滲み出る感情もおとなしめ。フィニッシュの後には両ひざに手をつき、へたり込みそうになっていた。体調不良でむかえた高地での試合は、本当にきつかったのだろう。

「演技が終わってすぐ、あいさつをする前に下を向いちゃったことは、山田先生に言われたんです。『苦しくても、キス&クライ(得点発表を待つ場所)に行くまで(ほかの選手は)我慢して普通にしているのに、あんなことをして……』って……。あの時は本当にきつくてあんなふうになっちゃったけど、今考えると、自分でもダメだったな、って思います」

 そうした山田満知子コーチの厳しい選手教育もまた、村上佳菜子の強さの秘密だ。男子選手やアイスダンスの選手でも、演技が終わった途端、息も切れ切れに氷上にうずくまる選手もいた今大会、村上のあの姿を責める人はいないだろう。

 それでも、「選手として、いつでもきちんと!」と、徹底して叩きこまれているからこそ、村上はとび抜けて優秀なジャンパーでないにもかかわらず、シニア1年目から活躍できたのだと思う。

 そして、大きな壁にぶつかったシニア2年目の今季、シーズン中にきっちり復調することができたのも、甘えを許さない山田コーチの指導の賜物だろう。

 2年後に迫ったソチ五輪に向け、さらに高い技術の習得はもちろん村上の大きな課題だ。しかし17歳にしてここまで観客を魅了できるエンターティナーとしての実力、同時にコンペティターとしての意識の高さ。このふたつこそが、村上佳菜子の大きな武器になっている。

「3月の世界選手権の目標は……まずはショートとフリー、両方でいい演技をすること。順位は前の世界選手権よりもいい成績、できれば6位以内に入りたいです」

 さらに見せてほしいものがあるとしたら、「一番になりたい、負けたくない!」という積極性だろうか。それもきっと、ニースでの世界選手権で目標を達成したとき、自然と芽生えてくるのかもしれない。

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(スポルティーバ「【フィギュアスケート】シーズン前半のトラブル解消。 村上佳菜子が四大陸選手権で見せた「大人への成長」」より)

























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