米軍嘉手納基地所属の救難用ヘリコプターHH60の墜落事故を受け、沖縄県の仲井真弘多知事は6日、菅義偉官房長官、小野寺五典防衛相、岸田文雄外相と会談し、「事故は県民に衝撃を与えた」として原因究明や再発防止を米側に求めるよう申し入れた。事故を受け、米軍は普天間飛行場(宜野湾市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの追加配備を延期し、嘉手納基地に8機あるHH60の運航を当面停止すると発表した。
「原因究明を徹底してもらわないと、基地の安定利用や設置は非常に難しくなる」。仲井真氏は3閣僚との会談後、記者団に憤りを隠さなかった。オスプレイの追加配備について「県民の不安はいやが上にも高まっている。民家の上に飛行機が落ちることもありうべしだ」と懸念。HH60の運航再開にも「原因が分からないままの再開は常識外れだ」とくぎを刺した。小野寺氏は会談で、「沖縄の皆さまに心配をかける事態が発生してしまった」と低姿勢に徹した。
政府は今後のオスプレイ配備や普天間飛行場の県内移設への影響を懸念し、事故当日の5日、岸田氏や防衛省がオスプレイ追加配備の延期とHH60の運航停止を米軍に求め、米軍も直ちに応じた。菅氏は6日の記者会見で、「(米側が)日本の要請を踏まえたと承知している」とアピール、仲井真氏は「通常と違って素早く対応してくれた」と驚きをのぞかせた。
安倍晋三首相は6日、訪問先の広島での記者会見で、「事件の原因究明と再発防止を徹底することに尽きる」と述べ、事故が普天間の県内移設に影響を及ぼさないよう努める考えを示した。だが、米軍はオスプレイの追加配備を「近い将来」再開するとし、で、沖縄の反発が収まる気配は乏しい。
◆朝日新聞(社説)米軍ヘリ墜落 大惨事への警鐘とせよ
沖縄県の米軍基地キャンプ・ハンセン内の山中に米空軍の救難ヘリコプターが墜落し、現場から乗員とみられる遺体が見つかった。
県民への被害は確認されていないが、近くには民家も高速道路もある。ひとつ間違えば大惨事になるところだった。
全面積の2割近くを米軍施設が占め、軍用機が飛び交う沖縄本島だ。住民が危険と背中合わせでいることが、改めて浮き彫りになった。
仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事は上京して、小野寺防衛相らに事故の原因究明と再発防止の徹底を要求した。
安倍首相はじめ日本政府から同様の要請を受けた米側も、事故を起こしたヘリと同型機の飛行を取りやめ、新型輸送機オスプレイの普天間飛行場への追加配備を遅らせた。
これを一時しのぎに終わらせてはならない。
沖縄県民の不安や憤りは、ふくらむ一方だ。
昨秋のオスプレイ配備には、県内の41市町村すべてが反対した。そうした声は聞き入れられなかったうえに、夜間や人口密集地上空などでの飛行制限に関する日米合意も、有名無実であることがはっきりした。
昨年末までに318件の合意違反があったという県からの指摘に対し、防衛省は先月、「違反は確認できない」と一蹴した。いったい県民と米軍のどちらを向いているのか。
一方、首相や防衛相がことあるごとに繰り返す沖縄の「負担軽減」は、遅々として進んでいない。
県民にしてみれば、オスプレイの追加配備で、騒音被害や危険ばかりが積み重ねられているというのが実感だろう。
そんなさなかでの墜落事故である。日米両政府は、小手先にとどまらぬ真摯な対応をしなければならない。
まずは今回の事故の原因究明だ。操縦ミスなのか、機体の不具合なのか、あるいは訓練のやり方に無理はなかったのか。それを踏まえた納得のいく再発防止策が必要だ。
オスプレイについても、「可能な限り」といった留保条件だらけの日米合意を見直す必要がある。いくら県や地元自治体が訴えても、聞く耳を持たぬという態度では、かえって政府への不信を強めるだけだ。
万一、住民に被害が出るようなことになれば、日米安保体制にとっても致命傷になる。
そんな悲劇を決して招いてはならない。今回の事故を、その警鐘と受け止めたい。
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人が介在している限り航空機事故は必ず起こる。だから民間地域への墜落事故も起こることをリスクに日米安保体制を考えていないとすると、それは政府がおかしいと言わざるを得ない。もし政府が『万一、住民に被害が出るようなことになれば、日米安保体制にとっても致命傷になる。そんな悲劇を決して招いてはならない。今回の事故を、その警鐘と受け止めたい。』などという期待的幻想を前提にするならば、もうそれは統治機関の用を為していないといっていい。
危険を軽減するひとつが普天間基地の辺野古移転である。