野田佳彦首相や民主党の輿石東幹事長らは5日、政府・民主三役会議を開き、辞任論が拡大する一川保夫防衛相の進退や9日までの今国会会期の延長問題を巡って協議する。自民、公明両党が会期末に提出する方針を固めている問責決議案は可決する公算が大きい。進退判断のタイミングは、消費増税に向けた与野党協議などその後の政権運営に直結する。
問責提出前の辞任を期待する声は民主党内にも出始めている。首相と防衛相は5、6両日に衆参予算委員会で「政治とカネ」などに関する集中審議、7日は参院決算委員会に出席する。野党が首相の任命責任も含め厳しく追及するのは必至。早期辞任で政権へのダメージを最小限にとどめる狙いだ。
ただ、自民党などはマルチ商法(連鎖販売取引)業界からの献金問題を抱える山岡賢次国家公安委員長・消費者担当相の問責決議案提出も検討している。「脅しに屈する形になれば悪い前例になる」(民主党幹部)と「辞任の連鎖」を警戒する声も強い。首相周辺は「問責が出るまで判断を急ぐ必要はない」と語る。
防衛相は小沢一郎元代表を支持するグループに所属し、輿石幹事長が訴える「党内融和」路線の象徴でもある。「首相が十分、防衛相を守らなかった」との印象を与えれば、不満が残る可能性もある。
問責が可決しても国会が閉会すれば、当面は野党の審議拒否などを心配しなくてもいい。ただ、首相は消費増税の具体策を盛った社会保障と税の一体改革素案を年内をめどにまとめ、その後野党に協議を呼びかける方針。その際「問責閣僚」が閣内にとどまっていれば、政権の最重要課題で野党が協力を拒む格好の理由を与えてしまう。
沖縄の米軍普天間基地移設問題にも影響を及ぼす。政府は辺野古移設の前提となる環境影響評価書の年内提出方針を変えない構えだが、野党や沖縄県の反発も予想される。
年明け1月には通常国会の召集を控える。来年度予算案などの審議を考えると、冒頭から与野党対決は避けたいのが与党の本音。「問責で即辞任、という印象を薄めることはできても結局、国会開会までには辞任せざるを得なくなる」(民主党幹部)との見方が多い。
昨年11月には尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の対応を巡り、当時の仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相への問責決議が可決。菅直人首相は通常国会召集前の今年1月の内閣改造で両氏を退任させた。
問責決議には法的拘束力がない。参院民主党内では「問責が可決しても無視していればいい」との声もある。ただ、参院で与党が過半数割れする逆転国会で「参院の意思」を無視し続ければ与野党の対決は決定的となる。世論が防衛相辞任に否定的な流れにならない限り、法案審議などが滞り、政権が行き詰まるリスクが高まる。
一川保夫防衛相の進退問題を巡り、野田佳彦首相は4日も判断を示さず、自民、公明両党は5、6日、衆参両院の予算委員会で行われる集中審議で首相の任命責任を厳しく追及する構えだ。民主党内では今後の政権運営と米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題への影響を懸念し、早期辞任を求める声が一層強まっている。
自公両党は臨時国会会期末の9日に一川氏の問責決議案を参院に提出する方針。公明党の高木陽介幹事長代理は4日のフジテレビの番組で「問責を出されて辞めるのではなく、早く自ら辞めるのが一番いい」と自発的な辞任を促した。自民党の山本一太前参院政審会長は「この期に及んでも一川氏をかばって『適材適所』と言っている首相の政治センスを疑う」と首相の任命責任に矛先を向けた。
これに対し民主党の城島光力幹事長代理は「自分で判断されることだ」と述べた。問責決議が可決されれば、来年の通常国会へ向け与野党対立が激化するのは必至。政府が年内に予定する普天間移設の環境影響評価書提出も一川氏が防衛相のままでは困難との見方が強まっており、民主党内からは「野党ではなく、沖縄に対して責任を取る形で辞めればいい」との声もあがる。
一方、昨秋の臨時国会で当時の柳田稔法相の辞任、仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通相の問責決議可決によって菅政権が急速に求心力を失った経緯から「何かの発言のたびに毎回、大臣が辞任するなんておかしなことだ」(参院幹部)と早期辞任に慎重な意見も残っている。
防衛相進退、政権を左右 与党、辞任ドミノ警戒 日本経済新聞
一川防衛相:進退判断持ち越し - 毎日jp(毎日新聞)
『…政府は辺野古移設の前提となる環境影響評価書の年内提出方針を変えない構えだが、野党や沖縄県の反発も予想される』
『問責決議には法的拘束力がない。参院民主党内では「問責が可決しても無視していればいい」との声もある。ただ、参院で与党が過半数割れする逆転国会で「参院の意思」を無視し続ければ与野党の対決は決定的となる。世論が防衛相辞任に否定的な流れにならない限り、法案審議などが滞り、政権が行き詰まるリスクが高まる』
環境影響評価書の提出に関して沖縄には法的発言権はなかった。だから、それに関する記者の質問はいついかなる場合でも無視しても問題はなかった。法的発言権がないということは意思がないということだ。それをなぜ、相手に意思があると仮定した比喩を田中防衛局長が使ったのか? 局長は無視することができなかった。問責は無視できるのだろうか。それとも局長のように法的拘束力のない相手に対し、あるかのように仮定した発言や行動をとるのだろうか。