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日本茶が世界を攻略 健康ブーム追い風

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■日本茶が世界を攻略 健康ブーム追い風 日経電子版編集委員・田中陽

 おそらく、読者の皆さんも半信半疑だと思う。何を隠そう私自身も「日本茶が世界を攻略する!」なんてことは番組スタッフとの会議が始まる数カ月前までは思ってもみなかった。しかし、いろいろとお茶について調べていくと私の固定観念を覆す事実、データがいろいろとあることがわかってきた。

緑茶の輸出量が急増

 たとえば、緑茶の輸出量の急増ぶりだ。1990年に283トンだったものが2012年には2351トンに10倍近く増えている。もっと歴史を遡ると衝撃的な事実を発見した。明治時代の1891年の輸出量は2万1000トンもあったのだ。当時、日本の輸出産品の中でお茶は生糸に次いで2番目に位置したのである。お茶の潜在力の高さがわかる。

 そんな世界を席巻する可能性のあるお茶の現場を知ろうと向かったのはお茶の産地として知られる鹿児島だ。案内してくれたのは番組にも登場している鹿児島県茶業会議所の専務理事、永峯更一さん。ちょうど1番茶が市場で競りにかけられる場面を取材することができた。今年は春の訪れが早く、茶葉の生育もよくて市場参加者のだれもが笑顔かと思っていたが、残念ながら豊作ゆえに相場はイマイチのよう。それでも品評会向けの茶葉は桁が違う値で取引されていた。この市場には時折、欧米の関係者も立ち寄り品定めの模様を見ていくという。ここで取引されたお茶が日本だけでなく世界で飲まれている。

世界で奮闘する営業マン

 番組では伊藤園の「お〜いお茶」が太平洋を渡り、アメリカのシリコンバレーのIT企業で働く人たちに親しまれている光景やニューヨークの小売店で現地の飲料メーカーの商品を押しのけて陳列棚を確保しようと奮闘する営業マンの姿も紹介している。その営業スタイルは泥臭く、決してスマートなものではない。だが世界に「お〜いお茶」を広めようとする地道な取り組みは、かつて日本の商社マンが日本製品を売り込もうと世界各地を飛び回っていた風景と重なる。

 日本茶に追い風となるデータはまだある。コーラなどの炭酸系飲料とお茶やコーヒーなどの非炭酸系飲料の消費動向について、ザ コカ・コーラ カンパニーのデータは興味深い。今年第1四半期の全世界の炭酸系の売上高の前年同期比伸び率は3%だったのに対して非炭酸系は6%になっていた。平均年齢が若い新興国では炭酸系を好む傾向にあるが成熟した国や地域では非炭酸系を手にする。非炭酸系も加糖と無糖に分かれる。まだ米国では非炭酸飲料の約9割が加糖だが今後、健康志向を背景に無糖の飲料の割合が高まることが予想される。

欧州ではライフスタイルに

 また欧州の沸騰現場として、お茶をたてて、静かな時間を過ごすドイツの人たちのライフスタイルをお伝えする。飲むだけではなくて、もはや茶道の領域だ。日本人以上にお茶を知ろうとする人たちに驚かされた。

 さて、再び鹿児島に戻ろう。訪れたのは鹿児島空港が近い霧島市のお茶の生産農家の蔵園和寛さんの茶畑。鹿児島のお茶が世界に羽ばたくことについて率直に「うれしいこと」と語っていたが、「日本でももっとお茶を飲んでもらわないと」と付け加える。確かに、ペットボトルのお茶を飲むことは増えているが、日常生活の中で湯飲み茶わんで飲むことは本当に少なくなった。昔のテレビドラマを見ていると朝、職場の机に座って熱いお茶を飲むシーンをよく目にしたが、今のオフィスで朝一番でお茶をすすることはほとんどなくなった。

 働き方が変わってきたからだと思うが、世界で認められつつあるお茶を私たちがもっといろいろな生活シーンで飲むことも大切なことを取材活動で痛感した。

 どうか、あしたの夜はお茶の間で「未来世紀ジパング」をご覧ください。

「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング〜沸騰現場の経済学〜」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。筆者が登場する「シリコンバレーで「お〜いお茶」が沸騰! 日本茶が、最強の輸出品!?」は6月3日放送の予定です。

















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