一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を巡るルールづくりの結論が先送りになった。厚生労働省は31日、検討会の最終回を開いたが、推進派と慎重派の対立は解けなかった。新しいルールが決まらず、当面は「事実上の販売解禁状態」が続くことになる。
「これ以上やっても合意は進まない。私もいろんな審議会の座長をしましたけど、これほどまとまらないのは初めて」。31日の検討会で座長の遠藤久夫学習院大教授はこう感想を漏らした。
大衆薬のネット販売は1月の最高裁判決が、副作用リスクの高い第1類と第2類の販売を一律に禁じた厚労省の省令を違法と認定。この判決以降、企業による薬のネット販売の参入が相次いだ。
厚労省は当初、検討会で5月中に新しい方向性を出すとしていたが、今回結論を先送り。最高裁判決を受けて必要とされた販売ルールは整備されないままの状態が続く。
ネット事業者ら推進派は、消費者が自ら健康を管理することを促す効用やこれまで店頭では買いづらかった薬を買いやすくなる利点を強調する。一方、日本薬剤師会など慎重派は、副作用リスクの高い第1類などの販売は一切認めない立場を変えていない。
6月中にまとめる成長戦略の素案はネット販売を「すべての薬で実現する」と踏み込んだ。だが、夏の参院選を控えた政府・与党内には票田となる薬剤師会などの反発を買いたくないという空気も強い。今後は閣僚同士の折衝で、この表現がどうなるかが焦点となる。
厚労省は今後のルールづくりのために専門家による新たな検討会を立ち上げる見通し。医療用医薬品から大衆薬に切り替わったばかりの商品などの販売を規制する案もある。対面販売の原則を維持するために「テレビ電話」でのやりとりを求めるか否かも検討する。
対面原則を重視し、強い規制を設ければ、ネット事業者のケンコーコムは国に対して「訴訟も辞さない」(後藤玄利社長)構えを見せる。ルール整備を先送りしても、課題は積み残したままだ。