オバマ米大統領は24日、米議会で一般教書演説に臨み、国内の製造業の復活を促す税制改革などをてこに米経済の持続的成長と雇用創出を実現する考えを示した。所得格差の拡大などを念頭に、中間層の働きが報われる社会的な公平さこそ「米国の価値観」とし、富裕層への課税強化などを通じ所得再分配を進める考えも表明した。外交では「太平洋国家」としてアジア重視の方針を改めて打ち出した。
オバマ大統領の一般教書演説は3度目。11月の大統領選を控えて自身の政策課題を網羅的に表明する最後の演説。2010年の中間選挙での大敗を受け野党との協調を訴えた昨年の演説と対照的に、中間層への支援を前面に据えて富裕層狙い撃ちの増税に反対する共和党との対決姿勢を鮮明にした。
オバマ氏は演説で、持続的な経済成長に必要な「青写真は米製造業から始まる」と指摘。多国籍企業や海外に製造拠点を移す企業への課税を強化する一方で、国内雇用を増やす製造業を税制面で優遇。米製造業の復活を雇用増につなげる考えを強調した。
優遇税制では、特にハイテク製品の米国内での製造には減税措置を通常の2倍に拡大すると明言。さらに工場の撤収などで打撃を受けた地域に進出をしようとする製造業には工場新設や職業訓練などで金融支援する考えも示した。
さらに「誰もが成功するチャンスを与えられ、相応の分担を果たす」と指摘し、勤労が報われる社会的公平の実現を力説。雇用悪化の影響を受けやすい中間層支援を目的に、超低金利の住宅ローンを借りやすいようにする支援策を表明。2月末に期限切れを迎える給与税(社会保障税)の減税を延長するよう与野党合意の早期実現も訴えた。
その一方、大企業や高額所得者が利益や所得に応じた責任を果たすべきだとし、富裕層向けの増税の必要性を主張。「富裕層の4分の1が中間層より低い税率で税金を払っている」現状の是正を求めた。
外交政策では08年の大統領選で公約に掲げたイラク戦争の終結について「9年に及ぶ戦争の後、初めてイラクで戦う米兵がいない時代が来た」と強調。イランの核開発問題解決に向け、あらゆる選択肢も排除しない強い姿勢も示しつつ、米国は「太平洋国家」と述べた。国防予算予算削減で浮いた財源の半分を財政再建に、残り半分を老朽化した国内インフラの整備に充てられるとの考えも示した。
■一般教書演説のポイント
【経済・内政】
○米製造業の復活へ優遇税制などの導入提案。産業活性化を通じ持続的な雇用増めざす
○米国内のエネルギー生産を促進。雇用増とエネルギー自給強化
○中間層支援へ住宅市場のてこ入れ策を検討
○格差問題を意識。富裕層への課税強化などに意欲
【外交・安全保障】
○国際テロ組織アルカイダとのテロ戦争で成果
○イランの核問題への断固たる対応
○米国は太平洋国家
(2012/1/25 日本経済新聞「米、製造業で雇用創出 大統領一般教書演説」より):