富士スピードウェイ(静岡県小山町)で2007年9月に開かれたF1日本グランプリ(GP)をめぐり、観客67人が「運営トラブルがあった」として計約1950万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、東京地裁であった。本多知成裁判長は53人の請求を一部認め、レースを主催したトヨタ自動車子会社の富士スピードウェイ(FSW)に計約83万円の支払いを命じた。
レースは30年ぶりに鈴鹿サーキット(三重県)から会場を移し、3日間で約28万人が観戦した。原告側の弁護士は「中止にならなかったイベントの運営上の不備で賠償が認められたのは画期的」と話している。
判決によると、FSWは混雑を避けるため、会場への出入りを周辺駅や駐車場からのシャトルバスなどに限定した。ところが、会場内で起きた陥没事故や雨によるぬかるみの影響などでバスが大幅に遅れ、一部の観客は行きや帰りに3時間以上バスを待たされた。判決は「長時間待たせたのは主催者に期待される調査、管理を怠った結果」などと指摘。待ち時間に応じた慰謝料やホテルの宿泊代金分として、1人あたり1万1千〜4万340円の賠償を認めた。
FSW側は「事前にベストと考えられる計画を立てており、陥没事故の発生は予測不可能だった」などと反論したが、判決は「陥没が起きた場所は簡易な舗装であり、事前に対策を採るべきだった」と退けた。
判決は一方で、「席からレースが見えづらかった」「トイレが不足していた」とする訴えについては賠償責任を認めなかった。
109人が提訴し、和解に応じなかった67人が24日の判決を迎えた。妻と2人で観戦し、帰りのバスを6時間待ったという会社員山崎善健さん(44)は「これまで一言の謝罪もなく、裏切られた思いがあったが、判決で責任を認めてくれてほっとした」と話した。