大阪市立桜宮高校で、体罰を受けていた体育科の男子生徒が自殺した問題で、大阪市教育委員会は、体育科などの募集を停止して普通科に変更したうえで、来月、入学試験を行うことを決めました。ただ、変更後の教育内容は具体的には決まっておらず、出願が来月に迫るなか、教育委員会は、今後、早急に内容を示すことが求められます。
大阪市立桜宮高校で、体罰を受けていた体育科の男子生徒が自殺した問題を受け、大阪市教育委員会は、来月下旬に予定されている体育科とスポーツ健康科学科の入学試験を中止するかどうか検討を続けてきました。その結果、21日、2つの学科の120人の募集を停止して、普通科に変更するものの、運動の技能を重視する配点などは変えずに、入学試験を行うことを決めました。これについて、橋下市長は、21日夜、「すばらしい決定をしてくれた。これで、再生に向けて本気で改革が始まると思う」と述べ、評価しました。
普通科に変更後の教育内容について、教育委員会は「スポーツに特色あるカリキュラムを組む」としていますが、検討はこれからで具体的には決まっていません。
出願は来月中旬に迫っており、教育委員会は、今後、早急に内容を示すことが求められます。一方、決定を受けて、21日夜、記者会見した桜宮高校の運動部でキャプテンを務めた3年生は「大人たちから一方的に体育科を奪われた」「体育科などに魅力を感じて受験を希望していた人がほとんどだと思うので、普通科に変わるのは残念だ」と訴えるなど、生徒たちからは不満の声も出ています。
大阪市教育委員会の決定について、教育行政に詳しい東京大学の村上祐介准教授は「生徒の人生に関わる決定を下すには、現場からさまざまな意見を吸い上げる必要があったが、短期間の議論でトップダウン的に決めたことに対して生徒を置き去りにしたという批判は避けられない。受験生は残りわずかな期間で志望を決めるよう迫られ、教育委員会は新しいカリキュラムや教員の体制についてできるだけ早く情報を提供するとともに、入学後もきめ細かくフォローしていく必要がある」と話しています。また、村上准教授は、教育委員会と自治体の長との関係について、「教育委員会の決定に市長の意見が影響したことは否定できず、1人の政治家の意向によって急激な変化が起こった今回のケースが、教育行政の在り方として適切かどうか、今後検討する必要がある」と指摘しています。
大阪市立桜宮高校2年の男子生徒(17)が自殺した問題で、市教育委員会が2月の同校入試で体育科の生徒募集を停止し普通科に定員を振り替えると決めたことを受け、橋下徹市長は22日、「体育科入試を続けるよりも生徒、保護者の意識を変えるメッセージになる」と話した。
橋下市長は「これまでの指導方法が間違っていた。在校生、受験生、保護者らの意識改革にこだわった」と強調。「入試中止で体罰がなくなるわけではないが、教育現場も動かざるを得なくなる」と理解を求めた。