俳優の渡辺謙(52)が15日、宮城県気仙沼市など東北各地で、主演映画「はやぶさ 遥かなる帰還」(2月11日公開)の特別試写会を行った。東日本大震災の直後から被災者支援に取り組んでおり、以前、避難所を訪れた際に「映画ができたら、一番先に見せに来るから」と約束。その言葉通りに14日との両日で、一般向けには最初の同作試写会を被災地である宮城、岩手県の5都市で実施、“心の救援物資”を届けた。
復興支援へ力を尽くしている謙さんが、避難所で交わした約束を果たすため、再び東北を訪れた。5度目の慰問となった被災地で、「俳優として、作品を皆さんに届けることが一番のプレゼントになると切実に感じました」と公開前の主演作を、一般向けには初めてお披露目した。
同作は、小惑星探査機「はやぶさ」を地球に帰還させるため、数々の困難に立ち向かった技術者を描いており、決してあきらめない姿は、被災地の現状とリンクする。謙さんの発案で、一部セリフを加えたシーンがあるといい、「『故郷』という言葉を残したかったんです。皆さんの心の中の故郷を、はやぶさにもう1回、見せたいという気持ちがあったので」と客席を埋めた被災者に語りかけると、感極まって声を詰まらせた。
試写会は、謙さんが熱望し、配給元の東映や会場関係者の協力を得て実現した。応募はがきを、仮設住宅を中心に配布し、気仙沼市(宮城)、石巻市(宮城)、宮古市(岩手)など5会場で計2600人を無料招待した。東北地方を2日間で369キロ移動し、舞台あいさつを8回こなす強行スケジュールとなったが、その合間を縫っては自らの足で町を歩き、被災地の今を肌で感じた。
津波で壊滅的な被害を受けた気仙沼市内では、社殿が流失した一景嶋神社へ足を運び、正月飾りを燃やす行事「どんど焼き」に遭遇した。
渡辺謙
大きな火を見て、(被災地では)格別な思いで新しい年を迎えられたんだろうなと感じました。
年賀状には「まず1歩」とつづったという謙さんは、これからも被災者と手を取り合って、復興への道を歩み続ける。
(2012年1月16日 デイリースポーツonline「渡辺謙 約束の被災地試写会 主演作公開前に」より)